Stars Fell On Alabama

2009年5月6日

今はニュールンベルクにいる。ハンブルクに3泊,ニュールンベルクに3泊,ケルンに3泊という,この旅も後半になり,いわばクライマックスを迎えようとしているわけだ。

ハンブルクでは,独日法律家協会会長のグロテア氏を自宅に訪ねてアスパラガスをいただき,検事のマティアス(・ルントホルツ)の家でお茶を飲んだ。

一昨日からニュールンベルクにおり,フランツ(・シュトレング)夫妻とレストランで食事をし,昨夜は,そのフランツに誘われ,少年刑法の講演会を聴きに行った。演者は,以前から知るシェヒ氏(前ミュンヘン大学)であり,再会をしてなつかしかった。それにしても実力を遺憾なく発揮した,素晴らしい講演であり,久しぶりにドイツの学者の底力を感じた。とはいえ,私が少年犯罪や少年刑法について素人に近いからそう感じたのでもあろう。専門家のフランツは,「時間が限られているから,表面的なものになるのも仕方がないよ」などと言っていた。

しかし,1時間ほどで,少年犯罪の現状と傾向について語り,種々の改正提案を紹介していちいち批判を加え,対策についての現状と提案について詳しく語り,現行法の問題点にまで及ぶというのはなかなかできることではない。スタンスも,実務から離れず,しかし適度に批判的で,経験的に明らかにされている部分とそうでない部分を切り分けるなど,感心させられた。

ちなみに,講演会場に,30年近く前にエアランゲンにいたときに,アルツト氏の助手をしていたエルマー氏(現在は弁護士か)が来ていて,突然に話しかけられた。人の名前をまず覚えられない私が,「私が誰か分かるか?」と突然に聞かれて,「エルマー!」と答えられたのは奇跡に近いことだった。

今日は,昨年2月までの5か月間を過ごしたエアランゲンを訪ねた。フランツ等,研究所の主要メンバーは相変わらずで,何の違和感もなく,一緒に昼食をとり,一緒にコーヒーを飲む。ルシュカ氏は,相変わらずカント研究であり,イギリスで出版する予定のカント研究書の原稿を出版社に送ったということで,1つ仕事を成し遂げたという顔をしていた(その本は,後にケンブリッジ大学出版局から出版された)。

明日からはケルンだ。ヒルシュ氏やクレス氏,そしてギーセンに行ってワルター(・グロップ)などを訪ねる。島田氏や小池君に会うのも楽しみだ。それにしても,こうして毎日誰かと会い,ではお元気でと別れることをくり返すと,太宰治の『グッド・バイ』を思い出してしまう。人に会う喜びは後に残らず,残るのは別れるときのさびしさばかり。さよならだけが人生だ。こういう旅行には,哀愁がともなうことになる。キャノンボールアダレイの演奏する「アラバマに星は落ちて」のメロディが聞こえてくるような気がする。