It's My Own Fault

2008年11月25日

昨日は,三連休の最終日。翻訳家の藤川浩二氏を誘って,横浜・関内のストーミー・マンデーへ行く。1年以上の間隔が開くが,ラブホテルの真横に,変わらぬたたずまいで同店は存在し,その店内には変わらぬ牧野元昭の姿(とギター)があった。それにしてもブルースはいい。周囲の何人かの人々にふりかかったむごい運命のことを思い,このところ落ち込んでいた心が少し明るくなった。直前に,ジョナサンで食べたイタリアン・ハンバーグもうまかった。コレステロールが高いので,肉を食べるときには,数日の命を捨てる覚悟である。「(命を)持ってけドロボー」と,神さまに向かって叫ぶ。

ハーモニカとサックスの入った6人の演奏を聴きながら,この音(たとえば,あのシンバルの音とか)は自宅のオーディオでは出せないなあと思っていた。生来,耳が悪い(すなわち,音を聴き分け,そのよさ悪さを評価する能力がない)ので,「豚に真珠」であるのだが,最近,自分の書斎用に小型のオーディオ装置を買い込んだので,音のことが気になるのだ。

購入したのは,デノンのCDレシーバー(要するに,アンプとCDプレーヤー等が一緒になったもの)と,ダリというデンマークのスピーカーメーカーのメヌエットというスピーカー(これもデノンが輸入販売している)である。定価の上では,あわせて30万円ぐらいになる。小さいものであるが,この部屋にはこれ以上の大きさのものは不可能である。トニー・ウィリアムスのドラムとか,チック・コリアのピアノとかは,特に美しく聞こえる。

ちなみに,このCDプレーヤーはSACD対応であり,たしかに,うちにあるいくつかのSACDは素晴らしい音がするように感じてしまう。こうなると,内容よりも,SACDであるかどうかで買うCDを決めるようなことにもなりかねない。これこそ本末転倒というものだろう。

今日は,うってかわって良い天気。慶應病院で超音波検査。といっても妊娠したのではなく,内臓器官の検査のため。慶應の健診では,定期的に受けるようになっているのだ(管になっている器官には無意味であるが,組織が密集している器官には有効と言われた)。帰りに,腹を空かせて,喫茶店ピザトーストでも食べようと思いつつ,頭の中にピザトーストの姿を思い浮かべながら,新宿の地下通路のところを歩いていると,古本市がたっているのに遭遇。いつもは,著作権侵害の香りがする,あやしげなDVDとか,各地の名産品らしきものとか,何やらキッチュなものやらを売っているところである。かつて大変お世話になった橋本文夫(法律学からドイツ語学に転向した人なので,本が体系的にできている)の『詳解ドイツ大文法』が目に入ったので,あわてて確認すると6300円。もう持っている本であるし,状態はきわめていいが,購入することを思い止まる。立ち去ろうとすると,なんと有斐閣法律学全集がタイムマシンに乗っていま到着したように,まったく新品の状態で,一冊800円で売られている。持っていなかった,木村亀二の刑法総論の増補版と,これは初刷を持っているがだいぶくたびれている加藤新平の法哲学概論をゲットした。大塚仁先生の特別刑法がないか探すとこれはさすがにない。

キムカメ増補版の新品を800円でゲットできるとは・・・・。増補の付いていない旧版は学部時代に買って持っているが,大学院時代に出た増補版は,本文が変わらないので,当時もったいなくて買わなかった。こうして今日,800円で当時2700円の本を買ったので,差額の1900円を得したことになる。しかし,これは得なのであろうか。手元にあれば,今日に至るまで,阿部純二先生による増補の部分を含めて参照できたはずであるし,論文等による引用も増補版で行えたはずである。そもそも後に阿部先生にお会いし,国際会議関連で一緒に旅行などもし,先生を尊敬するようになった私としては,この増補版に憧れさえ持ち続けていた。大学院時代に2700円をケチって損をしたということであろう。

この文章を読む若者たちよ,このように,本を買うことに躊躇してはならない。きっと損をする。来週後半には,『講義刑法学・総論』という本が出るが,書店に並んだら,すぐに買うべきであろう。できれば3冊ぐらい購入することが望ましい。なお,初回限定で,『講義刑法学・各論』および『講義特別刑法学』がおまけで付いています(ウソ)。