遺棄罪の本質をめぐって

2006年11月15日/2007年1月5日

久しぶりの12時間睡眠により脳のハードディスクを初期化した。初期化に伴い、とんでもない夢を見た。その内容を書くと、正夢になりそうなので書かない。いつものように朝風呂に入りながら、初期化といっても完全新品のHDになったら大変だよね、日本語も出てこない、などと独り言をいってけらけら笑っていた。風呂を出てから、うさぎにエンムギをやりながら、こっちも朝食をとった。それにしても、うさぎは、なぜこんなにエンムギが好きなのだろう。まるで狂ったように食べている。こっちも真似して狂ったようにトーストを2枚食べて、味がおかしいと思って賞味期限を確認したら1週間前に切れていた。もう胃に入ったものはもどってこない。まあそのうち腸を通って出て行くであろう。

わが家には居間兼食堂に8匹(8羽?)のうさぎが、庭に20匹以上のうさぎがいる。昔はモルモットを飼っていたが、すぐ死ぬので(夜中に急に電気をつけてもショック死したりする)、そして死ぬときに苦しむので(モルモットでもこうだから人間は大変だということで終末期医療の問題を考えるにはいいが)、ペットショップで「もっと生命力のあるやつをくれ」といったら、うさぎがいいということになり、最初はオス一匹だけを飼っていたが、一匹ではさびしそうだという仏心を出したのが地獄のはじまり。そのペットショップで「オスをくれ」と念を押したのに(ちなみに、判別はなかなか困難)、数週間後には5つ子が誕生した。もちろん、その時点でケージを7つ購入していれば、このようなことにならなかったが、2つにケチったのが失敗で、すぐに30を超えるようになった。

生まれたばかりは可愛いし、そのペットショップにも責任の一班はあるので、出産規制に失敗して生まれるたび、その店に引き取らせる。また、何を考えるのか家を出ていなくなってしまううさぎもおり、また、このかん、家人がオスメスの判別のプロに育ったこともあって今のところ約30匹でおさえられている。

猫が危険である。庭にいるうさぎについては、狙われないようにうさぎ小屋にかなり厳重な装備を設け、また父が生まれながらの猫嫌いなので、長年の工夫で、庭に入りにくいようにしてあるが(家にいると、父が箒を持って猫を追いかけている光景がたまに見られる)、一度だけ生まれたばかりのうさぎが猫にくわえられて拐取されそうになったことがある。これは家人がバットを持ってゲルマン魂で追いかけ、さすがの猫も途中でうさぎを離したのであるが、可愛そうにそのうさぎは脊髄をやられたのか、半身不随となってしまった。そこで居間兼食堂には寝たきりでベッドに寝ているうさぎがいるのである。うさぎを飼っている人は多いであろうが、30匹も飼って、中に寝たきりうさぎもいるという人はほかに少ないであろう。

うさぎはプレイボーイのシンボルマークになっているように、生命力が強いというばかりでなく、繁殖力が強い。オス同士、メス同士も交尾(の真似事)をする。ドイツの恩師、ヒルシュ教授にこの件について相談したことがあるが、額に皺を30は寄せて「Aussetzen!」と言った。日本語にあえて訳せば、「棄てることだ!」ということになろう。その言葉は、刑法の遺棄罪の「遺棄」と同じ言葉であり、さすがドイツの刑法学者であると思った。

 

その後,うさぎの数が29匹になったところで,志木高の先生にお願いして校内にうさぎ小屋を建ててもらった。1月2日に愛車メルセデスの後部座席に5匹のうさぎを乗せて出発。はじめて志木高に車で行ったので片道2時間近くかかったが、無事に到着して、5匹を立派な小屋に収容していただいた。ひと安心ということで、29匹いたうさぎが24匹になったはずのところが、再び出産制限に失敗して、大晦日から正月にかけて5匹が出生した。これがめちゃくちゃ可愛いので、これをすべてペットショップに引き取らせようとは思うが、いずれにしてもやはり29匹の現状のままである。


ちなみに、刑法学界には「うさぎ30」ならぬ「中谷30」という笑い話が伝承されている。かつて恩師の中谷瑾子先生の傘寿祝賀論文集を作ったことがある。なかなか売れにくい本なので、いろいろな機会にいろいろな人に「中谷傘寿」を買ってもらうように持ちかけた。あるとき、東京大学山口厚教授(当時)にこの話をしたところ、わかったということで、山口氏が出版社に電話し、一冊送れと依頼したのであった。そして、電話に出た編集部の人が電話を切ったあと、営業の人に「中谷傘寿を山口先生宅へ」と指示した。数日後、山口氏宅に何と大きな段ボール箱が到着し、中には30冊の論文集が入っていたのである。「中谷傘寿」が「中谷30」と理解されて30冊を送る手配がとられたのであった(笑)。

ああ、お正月なので楽しい話をしようと思ったが、まったく乗らないね。それもそのはず、ドイツ語バージョンの「社会の変化と刑法」がまだ完成していない(締切りは12月31日)。井田良はまだ年を越せていないのだ。こんにゃく屋(=飜訳屋)に徹しているのだが、正月三が日での完成はやはり無理だったのである。日本語原稿あと4頁をドイツ語に訳し、全体を推敲しなければならない。韓国に送ることができるのは日曜日あたりになるかもしれない。

まあ焦っても仕方がないだろう。明日は、4強目ざしてバスケットボール部の諸君が頑張るので、大声で応援をすることでたまったストレスを発散することとしよう。それにしても、朝日新聞で、闘将、酒井君が取り上げられていてうれしかった。インカレで優勝したら彼のシューズをもらう約束だったのだ。それが二位に終わったので残念であった。オールジャパンで、天才・志村君のいる東芝と決勝、何てことになったら本当に素晴らしいことだ。そのときには2人から2足ずつシューズをもらうこととしよう。