Alone

2007年10月3日

日曜日から昨日まで、韓国の清州市に行っていた。清州大学校法学部の趙君(Cyo Byung-Sun)と懇意なのだが、来年の秋にお互いの大学間で協力して共同シンポをやろうという話から、手始めに小さな講演会をやりたいから来てくれということになって急に出かけることになった。同僚の民訴の三上威彦教授に(ドイツ法系のよしみということで)無理に同道をお願いして2人で清州市まで行ってきたというわけだ。

1日目はソウル市のキョンボックンやチャンドックンなどの名所を案内してもらい、夜、清州市に移動、ラマダ・ホテルという高級ホテルに泊めてもらい、2日目は、清州市内観光後、大学の副学長を表敬訪問、16時30分から「現代日本における法的諸問題」という立派な講演会を開催してもらった。もちろん韓国語ができないわれわれは、挨拶だけはたどたどしい英語でしたが、後は(これもたどたどしい)ドイツ語で講演をした。学部の教授たちの顔も見えたが、学生も多く列席していた。

三上教授は日本のロースクール制度の話をした。韓国もこれを導入することを決め、清州大学校も設立を決定したところなので、かなり関心を呼んでいた。ただ、韓国では、ロースクールを持とうとする大学は法学部を廃止しなければならないということで、かなりリスクを負うことになり、しかも定員は最高150人で、最終的にはあちらの文科省が定員を決めるということであった。清州大学校では法学部は150人定員規模のロースクールの実現を目ざしたが、学長は予算の関係(特に教員を集めるのが大変)でこれに抗い、結局100人で妥協したという、どこかの国のどこかの大学と同じような出来事もあったという。

私は、「日本における殺人罪」という(私にとって)定番(と勝手に思っている)の話をした。韓国語に訳してくれたのはバーゼルで学位を取ったLeeさんだから、内容はよく伝わっていると思ったが、翻訳が読まれているときに学生たちの顔をながめていると、いまいち反応がなかった。それでも途中で会場を出て行く学生は殆どいないので、ちょっと不審であったが、後で謎が解けた。趙君のゼミの学生40人が出席を強制されたのだ。講演後には、ゼミ代表らしき学生が出席を確認していたのには苦笑した。これもどこかの国の講演会でもよく見られることであろう。

3日目は、清州市から1時間ぐらいのところにある法住寺という有名なお寺を参観した。お寺の僧侶らが食べる料理までご馳走になり、感激した(が、食に関する順応性の低い私は、すぐにマクドナルドに行きたくなった)。帰りは、ソウル市内の渋滞に巻き込まれ、金浦空港には出発時間少し前に到着。こちらは遅れたら遅れたとき、と悠然と構えていたが、趙君はかなり焦ったらしい。帰国してメールを確認すると、空港到着が遅くなったことを詫びる趙君の長いメールが届いていた。とんでもない、申し訳ないのはこちらだ。

韓国の人たちとの交流のために何とか役に立ちたいと思うことしきりである。まずは、ハングルの勉強を進めなければ・・・・。これだけでも読めるようになろう。

趙君が今日くれたメールには、「君の感謝の気持ちはすでに韓国にいたときに君から伝わってきた。人の人生はもともと孤独なもの(einsam)だから、そういうことを感じると幸福になれる」とあった。「人の人生はもともと孤独なものだから」という泣かせる一節を読んで、高中正義の「Alone」のメロディが心の中に響いた。