Nobody Knows You When You're Down and Out

2007年6月6日

ドイツでは4月(ないし5月)からはじまるセメスターを夏学期という。私の勤務先では、これを春学期と呼ぶ。最初は「春学期」という命名に感心したものだが、やはりどう考えても夏学期と呼ぶのが実態にあっている。ドイツ以上に夏学期というべきであろう。この失敗した命名法に、ヨーロッパ文化と比較しての日本文化の底の浅さが如実にあらわれているといえよう。と、いうほどの大きな問題ではないか。

いずれにしても、日記を書く間隔が開いてしまった。書くべきトピックがない訳ではない。名城大学での日本刑法学会大会のこととか、はしか休講のこととか、先週の月曜日(いろいろと事件が報道された日のことである)に倫理委員会で6時間以上、信濃町慶應病院にいたこととか、フォルンバウム氏の講演会とその前後におけるお付き合いのこととか、日本学術会議の立法学分科会(委員長が井上達夫教授、副委員長が私)での私の報告とそれをめぐる議論のこととか、ハンカチ王子がプレゼントしてくれた月曜休講のこととか、日記に書き残しておくべきことはある。しかし、それにしても、その時間がないし、その気力がわかない。来週、某お役所で講演することを依頼されており、その準備をする暇もないとか、ジュリストの特集のための論文(20日締切り)に取りかからなければならないのだが、まだ他にやることがあるとか、そういう状況だと、その日のことを振り返ったりするという心の余裕さえ持てないのである。当面、6月が勝負であり、これらを何とか大過なくすませて、グロテア氏の講演会(20日)を乗り切り、6月最終週の盛岡でのお医者さん看護師さん相手の講演(28日)を乗り切れば、何とか先が見えてくる。

そこで今日はなぜ日記を書こうと思ったか。法科大学院で小池信太郎講師と共同で担当している刑法1(刑法総論)の授業での出来事について書こうと思った。先日の火曜日の授業で、ほとんど質問者がいなかったのである。それまでは、毎回、授業後にも多くの学生が教壇に詰めかけるという状況であった。小池講師と2人でさばいて対応するのがやっとだったのに・・・。

授業後に小池講師に、今日は質問者が少なかったですねえ、といわれて、たしかに、と思った。そこに、非常勤で来ている後藤弘子さんが通りかかり、「それは井田さんの授業がつまらないからですよ」と例によって批判的な発言をされる。たしかに、小池講師は、司法試験に早期合格され、修習も終えており、刑法も刑訴も両方とも出来る人だ。その日も、明快で、すんなりと頭に入る、いかにも頭脳明晰な人という、まとまった話をされた。まるで、お前とは頭のできが違うんだよと、共同担当者に暗に示そうとしているかのような明快な話であった。そこで、授業の不評の責任は当然私にある。まあ正当防衛と緊急避難がややこしいテーマであることも一因であろうが、とにかく受講生は(坂本九ではないが)私の授業への評価をその態度で示したのである。

おそらくいつもそうなのだろうと思う。今はちょうど夏学期の折り返し点の時期である。こちらも、当初の新鮮な気持ちをいかさか失って、緊張を欠き、別の仕事に気を取られ、惰性に流れがちとなる。受講者もまた同じであろう。今回はそのことに気づいただけでもよかった。来週と再来週ぐらいはとりわけきちんと準備して、きちんと話をしてみるつもりだ。

論文集『変革の時代における理論刑法学』の校正作業を終え、責了にしたところで、お礼の気持ちもあって、慶應義塾大学出版会の岡田智武さん(この方もきわめて優秀な方)に、オペラ・カルメンのDVDを差し上げた。すると、岡田さんが恐縮され、私にユンケルスター(普通に買うと4000円ぐらいする)とマカ皇帝倫という高価な錠剤200錠をプレゼントしてくれた。よほど消耗しているように見えたらしい。これら薬剤の助けを借りて、授業を頑張ろう。もっとも、これらが上半身に効果を発揮するかどうかはかなり疑問であるが。

 そこで、久しぶりに高く高くいななく、ばふーん。