Thorn Tree in the Garden

2007年4月19日

明日(というかもう今日)は、警察大学校の特別捜査幹部研修所ということで過失犯の講義をする。このところ、年に2度ほど招かれる。場所は飛田給なので、家からとても近い。雰囲気は大学とは大違いで、日の丸の旗が掲げられている教室に入っていくと、「起立!礼!」という号令がかかる。お巡りさんたちは、背を正して正面から見つめてくれる。冗談を言うような雰囲気ではない。いきなり、「ポリ公の皆さん、おはおは、あたし加護亜依でーす」とか言っても、きっと笑ってくれないであろう。いや逮捕されるかもしれない。

例年しゃべっている同じ原稿を見直して、自動車運転過失致死傷罪のことなどを付け加える。この原稿は、もともと司法研修所司法修習生のための講演をしたときに書き、それを「研修」という雑誌に載せたものに、さらに特捜研の講義に際して修正を加えたものである。ウィントン・マルサリスのトランペットを聴きながら、内容をざっと見直し,さあプリントアウトしようとしたら、なんとA4の紙がない。トイレで紙がないのも困るが、講義の前に話す内容をプリントアウトできないのも困る。仕方ないので、B5の紙にプリントしたら、枚数が増えてものすごく分厚くなった。何回もめくらなければならないので、目が回りそうだ。小学生の頃はスカートめくりの井田と呼ばれたが、いまや講義案めくりの井田という訳だ。それを見ているうちに、何か急にやる気がなくなってきた。同僚の伊東研祐さんのように、紙資源のことも考えて、パソコンを持ち歩いてそれを見ながらしゃべるようにしたほうがいいかもしれない。遅かれ早かれそういう世の中になるであろう。

世情穏やかならぬこともある。知り合いのドイツ人女性の訃報が伝わったこともある。雨が降りやまぬこともある。気が滅入る。新研究室の中に書庫があったあの頃、中谷先生や宮澤先生のとめどもないおしゃべりを聞きながら、ただただ相づちを打っていた、あの頃にもどりたい。追われるような感じはなかった。のどかだった。当時は、あのまま時は流れないのだと思っていた。