I Can't Get Started

2010年7月3日

今日は土曜日。勤務先のキャンパス近くで,懇意にしているK検事とお食事した後,かつての教え子の訪問を受けて談笑し,夕方からは,あるパネルディスカッションに参加して15分の報告,さらにその後は,とある会合に顔を出して,先ほどこの仕事部屋に戻ってきた。

K検事と支払いをめぐって喧嘩闘争に発展し,結局,「割りかんにしよう」ということになって財布をとり出そうとしたら財布がない(Mein Gott, es gibt keinen Saifu!とはドイツでは絶対に言わない)。金がないのに彼の分も払おうとした時点では,支払いに関し完全に不能犯であり,あきらめて割りかんに決めた時点でも自己の支払いに関し不能犯であった。Kさんにおごってもらうことになり,情けない気持ちで彼と別れた。別れ際にくれた本は,『公判に強い捜査実務101問』であった。何で100問でなく,101問なのだろう。それはどうでもいい。大学の仕事部屋にもどったが,やはり財布はない。家に忘れてきた。放念サラダオイル,いや失念サラダオイルだ。大学まではポケットに入れたスイカで来れるので,自宅に財布を忘れたことに気づかなかったのだ。

以前に財布を忘れたときには,弟子の佐藤拓磨君に土下座して1万円を借りた記憶があるが,返したかしらん。あるパーティで所持金が足らずに,出席者の方に借りたこともあったっけ。いずれしても,モンナシーヌの場合はあまりにも恥ずかしい。

今日は,土曜日に研究室に来ている誰かにお金を借りようかと思ったが,パネルディスカッションでしゃべる15分の原稿ができていない。後のことを考えることなく,原稿作成に集中することとした。大した内容の原稿はできなかったが,それで何とかパネルをごまかして,会合でお話をして部屋に帰ってくると,もう20時近く,猛烈に空腹感を感じた。

子どものときに所持金がなくなって交番で借りたということはあったが,いくら勤務先の財政状況が悪いといっても,私が警官に借金をしたら,福澤諭吉先生は間違いなく情けないといって号泣するであろう。

ということで空腹感に耐えながら帰宅するまで我慢するしかないと,あきらめて,机の上を見ると,そこには教え子がもってきてくれたモロゾフ製の高級ゼリーが3つある。それを一気にたいらげた。ずずずずと音を出して食べた。ゼリーの中にフルーツが入れてあるのがよい。ようやく生き返った心地がする。

ところが今になって恐怖心が湧いてきた。スイカに十分のチャージがなされているかわからないのである。下手をすると,五反田ぐらいまでしか帰れない可能性がある。どうしよう。

とにかく文無しだと,このようにおどおどしながら生きていくほかはないのである。世良公則の「文無し」,久しぶりに聴きたい。

  おいらはモン無し 夕飯のかわり
  ゼリーをずるずる食うしかない