Softly, as in a Morning Sunrise

2006年12月6日

50年も生き恥をさらしているが、うち7年近くはドイツにいた。人生の10分の1以上をドイツで過ごしているのだから、どこかがドイツ人化してくることも怪しむに足らない。

1つすぐ思いつくのは、夜にお風呂に入らず、朝に風呂に入る性癖である。ドイツ人は毎晩風呂に入るという習慣がない。せいぜい週に一回日曜日とかである。それで不潔かというとそんなことはまったくなく、朝、洗面台等できわめて丹念に身体を拭くのである。そのための小さなタオルが売られている。その代わりにシャワーを浴びる人ももちろんいる。

夜に風呂に入るのは、集合住宅の場合にはお隣さん等に迷惑ということもある。私は、ケルン時代は、裕福な高齢のご婦人の家の屋根裏に住んでいたが(日曜の昼には一緒に食事をしたが、よくヒットラーの話を聞いた)、夜にシャワーなど浴びようものなら、下に響いて怒られていたに違いない。風呂に入らずそのまま寝てしまうというのも慣れれば楽なものであり、博士論文を夜中まで書いて、疲れてそのまま勉強机の隣のベッドにもぐるということがままあった。

かといって当時は朝、シャワーを浴びるという習慣もなく、ましてや洗面台で身体を拭くことも知らなかったので、どんどん不潔化することになる。ドイツ人は風呂に入らないので不潔であり、だから香水が必需品になった(ちなみに、オーデコロンとは「ケルンの水」という意味である)というのは俗説であり、不潔なのはケルンに住む日本人なのだ。

ということで、清潔を維持するため、朝シャワーを浴びることを習慣にすることにした。習慣とは恐ろしいものである。日本に帰ってきても、夜に風呂に入ろうとする気が起きない。逆に、朝、風呂に入って身体をきれいにしないと、一日がはじまらないのである。

一度、朝、寝ぼけた頭でお湯をためたところ、70度ぐらいのお湯をためてしまい、たまったところを、「これこれ、これなんだよね」とかいいながら、いつもより湯煙が多いことを気にせず飛び込み、あわてて出ようとしてすべってより深く湯の中に沈んだということがあった。時間がなかったので、そのまま(当時校長をしていた)志木高校に行き、保健室のお医者さんに治療してもらった記憶がある。 

ところで、ヴェポラッブという薬がある。先週、風邪をひいていたので、これを夜、胸とかのどに塗りたくって寝ていた。朝、風呂に入ってすべて洗い流すからいいけど、ふつうの日本人はどうするのだろうと思った。次の日までこのにおいが残ってしまうかも知れない。この薬は、西欧人の生活パターンを前提としたものであるのかも知れない、こんなことを思ったのである。