Let It Rain

2007年11月22日

アンスバッハ市の聴衆20人の前での講演(地方新聞に広告まで出ていた)も何とか切り抜け,謝礼としてフランケン地方の豪華な写真集(Bildband)をいただいた。その写真集をあらためてみると,フランケン地方は,フランケンシュタインからする連想とは違って,美しいところなのだ。バンベルクヴュルツブルク,ローテンブルク,ニュールンベルク,アンスバッハ等々。

そういえば,先週金曜日は,ミュンヘン大学滞在中の島田聡一郎さんもこちらまで訪ねてきてくれ,一緒にニュールンベルクを散歩した。たしかに,美しい街であると再認識した。有名なお店で,焼きソーセージとザウワークラウトを食べたが,ご一緒した人が良かったのか,なかなかおいしいものであった。島田さんは,希代の秀才であるが,素晴らしい人柄のかたで,こういう状況でないとゆっくり話をすることもできなかったはずで,今回の在外研究の1つの大きな収穫だったといえよう。

とにかく土曜日までにジュリスト特集の原稿を書かなければいけないので,尻に火がついている状況である。まあできたところで手放すほかはない。こういう状況になると,ひねくれ者の私は,全く関係ない本が読みたくなったり,DVDが観たくなるのでやっかいだ。

ちなみに,最近読んでいるのが,エリック・クラプトンの自伝のドイツ語訳である(まだ日本語版が出ていないようだ)。最初は面白くて読み出すとやめられないほどであったが,女性関係の話とドラッグと酒の話題ばかりで,読むのが辛くなってきた。それにしても大変な人生であるなと思う。62歳で「私の人生」は早すぎるかと思ったが,ここまで生きてこれているのが奇跡であるのかも知れない。

本といえば,こちらにきて,日本にはないと思うところがある。それはショーウィンドーのことで,以前は「閉店時間法」が厳しく,「労働者保護」の名目で,午後6時には店が閉まってしまい,土曜日も(月一回の例外を除いて)午後2時まで,日曜日は完全に閉店という状況で,非常に不便であり,また楽しくもなかった。今でも,多少事態は改善されたとは言え,平日は店は7時か8時ぐらいまでであり,日曜日は完全に閉まってしまう。そこで,当然のことながら,ショーウィンドーをのぞきながら歩くという時間が増加することになり,店の方もそこに力を入れるようになる。

そういった中で,大学そばの本屋のショーウィンドーには,教科書の最新版が並ぶことになる。そこで,私などは,当時,毎日のように,そういうショーウィンドーに飾られる本を見ながら,「ああ,あの教科書の第2版が出たんだ」とか「あの本は18版になったんだ」とつぶやく機会が多かったわけだ。私にとっての原体験の1つであるかも知れない。今回も,そうやって,ショーウィンドーの前に立ち止まりながら,はじめての留学当時,まだ版の若かった民法の教科書などが分厚くなって,版を重ねていたり,あるいは改訂の仕事が弟子に引き継がれているのを見て,時の流れを強く感じることがある。また,時の流れを超えて読み継がれる教科書たちにも憧れを感じる。

当時からよく読まれていたウェッセルスの教科書は,総論がボイルケという人に受け継がれ,ウェッセルスの死後も版を重ね,毎年改訂版が出る(CDROM付きもある)というベストセラーになっている。何冊目になるか分からないが,今回もその37版を買ってしまった。

私の基礎から学ぶ刑事法は,現在,第3版で,そろそろ第4版をという話もあるが,もし37版を出すためには400歳ぐらいまで生きなければならないであろう。神があれほど乱脈な人生を送ってきたエリック・クラプトンに62年以上の寿命を与えているのだから,私には400年ぐらいくれてもよさそうなものだ。