One More Cup of Coffee

2007年5月5日

論文集『変革の時代における理論刑法学』の校正を終え(といっても初校)、1万字の著者解題を書き、調子に乗って「はしがき」まで書き終えて、慶應義塾大学出版会の岡田智武さんに送付した。表紙のデザインにも凝ってくれているので、きっと素敵な外見の本になるであろう。ほっと一息ということで、授業の準備の仕事に戻る。6月には2人のドイツからの訪問者の講演を何とかオーガナイズしなければならない。今のうちに授業の準備を進めておかないとひどい目に遭うであろう。

ところで,『述』という市販の雑誌(明石書店)があり、近畿大学国際人文科学研究所紀要なのであるが、大学の紀要というにはあまりにも素敵なデザインだ。これに文芸評論家の青木純一という人が「刑法と言語」というタイトルで、私の『刑法総論の理論構造』の書評を書いてくれている。この本の最初で、またおそらく最後であろう書評が、こういうところでこういう形で出されるのは驚きだ。しかも、著者としておこがましいのであるが、きわめて正確に私の主張の内容を要約して、まとめてくれている。ただ、最も驚かされたのは、あの本が「刑法と言語」という側面から一貫して読むことができるという事実だ。著者に手紙でも書きたい誘惑に駆られるが、ひそかに感謝するにとどめておくべきなのであろう。

コストコで購入した、おそらく一杯分10円程度の簡易ドリップコーヒーが意外においしい。私は浪費家なので、200グラム2000円以上のコーヒー豆でも何の躊躇も抵抗もなく買ってしまうが、ドトールの簡易ドリップ式のコーヒーなど、とてもおいしいので愛用している。今回、コストコで見つけた激安品もおいしいので感動しているのだ。コツは、カップ半分ぐらいしか作らないことだ。一杯10円なのだからここでケチって3杯分とか作ろうとすると天罰が下る。大空が割けて頭に雷が落ちるのだ。そして、入れるのは茶色いコーヒーシュガーでなくてはならず、また少し多めでなければならない。また、クリープ(ニドやブライトではダメ)を少量入れる必要がある。こうするとなかなかいけるのだ。

新宿にある某有名ホテルの1階のラウンジのカウンターに腰掛けて時間をつぶすことがある。コストコのコーヒーよりもおいしくないコーヒー1杯で最終的には2000円ほど払うことになるが、長居をすることが多いし、静かに本が読めるので、気に入っている。この間、しばらくしたところで、コーヒーのお替りはいかがですかと聞かれた。このときには内心どうしようか本当に迷った。無料ですかと聞くのはカッコ悪いし、それほど飲みたくないコーヒーのためにさらに1000円ほど払うことになるのはさすがに躊躇されたのだ。しかし、もう少しそこにとどまりたかったので、「お願いします」と答えた。あとで確認するとそれは無料であったが、こういうことにあれこれ迷わなければならない自分が情けなかった。そのぶんの時間と気持ちの無駄だ。

そんなことを思い出しながらコストコのコーヒーを飲む。かのクラウス・ロクシン教授も、そういうつまらないことで迷ったり、後悔したりするのであろうか。